また、水素を発生させる方法として、水の電気分解やスティームリフォーミングといったものがありますが、前者は電気を必要とし、後者は高温環境を用意しなければならず、水素の生成に特別な環境を必要とします。
高知工科大学のKajai Chayanon(当時:大学院修士課程2年、2025年9月修了)さんと藤田 武志教授(理工学群/総合研究所 カーボンニュートラル材料研究センター)は、安全かつ大量に製造することが可能な「ガスアトマイズ粉末」に着目し、ガスアトマイズ法(*1) で製造したCa-25 at.% Mg合金粉末(カルシウム:マグネシウム=3:1の割合で混ざり合っている)を常温の水で加水分解したところ、高効率で水素が発生することを明らかにしました。
この方法は、常温環境でも利用可能で、携帯性にも優れるという点から携帯型水素供給装置や緊急用電源ユニットへの応用が見込まれます。
また、この合金粉末の微細構造を評価したところ、微細なCaリッチ相と Mg₂Ca相が反応効率を高めていることを確認しました。
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図1 Ca-25 at.% Mg(共晶)合金粉末のSEM像
この成果は、2026年1月1日、International Journal of Hydrogen Energyに掲載されました。
[プレスリリース] ―水を加えるだけで水素を発生― ガスアトマイズ Ca-Mg 合金粉末が常温で高効率水素生成を達成
コメント
「実験失敗より生まれた研究テーマでした。カジャイさんが頑張って失敗から成功をもたらしました。カルシウム-マグネシウム合金はあまり知られていませんが、水素発生用の材料として今後広まるかもしれません」(藤田教授)

用語解説など
*1)ガスアトマイズ法
溶融金属を微細な球状粒子に変えるプロセス。高速のガス流を用いて溶融金属を液滴に分解し、それを粉末状に固めることで実現します。
*2)加水分解
物質が水と反応して化学結合が切断され、新たな化合物や生成物(本研究では水素)を生じる反応。
掲載論文
題 名:Hydrogen generation through hydrolysis of gas-atomized Ca-Mg eutectic alloys(ガスアトマイズ法で作製した Ca-Mg 共晶合金の加水分解による水素生成)
著 者: Chayanon Kajai, Takeshi Fujita
掲載誌: International Journal of Hydrogen Energy
掲載日: 2026年1月1日
D O I : https://doi.org/10.1016/j.ijhydene.2025.153319

池田さんは、10年あまりにわたってブラックホールを可視化する国際プロジェクトに携わってきました。
観測データから、誰もが納得できる"1枚の画像"を導き出すために、統計学者としてどのように関わってきたのか、ご自身の体験を振り返りつつ語っていただきました。

(2枚目 天の川銀河中心の巨大ブラックホールの画像 Credit : EHT Collaboration)
統計学は「人が判断する材料」を与えるもの
高校生のころは、数学が大好きで、1日中、数学の問題ばかり解いていたという池田さん。大学では、数学を応用して物を精密に計測する技術を追究する「計数工学」を専攻し、数学と物理を基礎として、情報処理の理論と技術を学びました。
その後、2003年から現在まで、東京都立川市にある大学共同利用機関法人「統計数理研究所」において、データ科学の基礎となる統計学の理論研究を進め、さまざまなデータの解析を行っています。
統計数理研究所では、医療や経済、地震など、多岐に渡るデータの取り扱いに関する研究が行われています。
池田さんは「統計学」が、高校で学ぶ数学の"統計"と大きく異なるのは、単に計算して問題を解くだけではなく、それらの基礎となるデータ解析方法を開発し、「人が判断する材料」を提供することが最終目的であると強調しました。

例えば、2011年におきた「東日本大震災」。
震災後、日本周辺の魚介類の安全性を評価するため、池田さんは水産資源の専門家らとともに、各地で毎週調査されていた魚介類の放射性物質の濃度に関わるデータを解析し、大量に蓄積された過去のデータから現在の魚介類の安全性状況を推測する数理モデルを構築しました。
生鮮品の流通上、リアルタイムでの信頼に足るデータ解析が難しいなか、統計学を用いることで、人々が意思決定する際の重要な判断材料を提供することができました。
「統計学で、唯一できないのはデータそのものを作ること。すでに存在するデータをもらって、それから何が結論できるかを解析するのが仕事です。先入観なしに全ての可能性を列挙して、それに確率を当てはめて比較することで、受け取る人に『あっなるほど、そうだね』と納得してもらう、それが大事なのです」。
地球規模の望遠鏡と"歯抜けの鍵盤" -EHTコラボレーション-
2013年ごろから、池田さんは、研究の軸足を天文データの解析に置いています。
特に力を入れているのが、"見えないはずのブラックホールの可視化"を目的とする国際プロジェクト「EHT(Event Horizon Telescope)コラボレーション」です。
私たちが住む天の川と同じく、100億から1000億個もの星が集まった「銀河」のほとんどが、その中心に、太陽の質量の数百万倍から数億倍もの超巨大ブラックホールが存在することが、天文学的観測データから示唆されています。ブラックホールとは、今から100年以上前にアインシュタインが導いた一般相対性理論によって予言されたものです。

一般相対性理論に従えば、ブラックホール周りの時空の歪みのため、ブラックホールの中心部からは光が外に出られないものの、その周辺領域には逆に光が集中することが導かれます。その結果、ブラックホール近傍を「見る」ことができるならば、中心の真っ暗な穴を明るいリングが取り巻いた、あたかもドーナッツのような画像となっているはずなのです。
しかしそのような穴の大きさは、地球から見上げた月の表面に本物のドーナッツを置いたときの大きさとほぼ同じ。極限的な角度分解能(視力)が必要です。だからこそ世界各地の天文学者らがその挑戦に魅せられて、何とかして「ブラックホールが存在する」ことを視覚化すべくEHTプロジェクトが立ち上がったそうです。

しかし、地上にある個々の望遠鏡ではそのような視力を達成することは不可能です。
そこでこのプロジェクトでは、地球上の離れた6地点にある8つの電波望遠鏡を用いて同時観測することで、あたかも地球サイズの巨大な望遠鏡とみなすことができる「電波干渉計」を作り出すことで、ブラックホール撮影を試みることになりました(下図)。

(Credit : EHT Collaboration)
残念ながら、望遠鏡は地球上にまんべんなく置かれているわけではなく、たかだか6地点からの限られたデータしか取得できません。そのため、ブラックホールの全体像を浮かび上がらせるだけの完全なデータを得ることはできません。
この状況は、池田さんいわく「鍵盤がいくつか抜けたピアノで奏でられた曲を聴くようなもの」。
つまり、限られた音(データ)から、元の曲(ブラックホールの画像)をどこまでうまく再現できるか、が鍵となります。ここで活躍をしたのが、池田さんが専門とする統計学です。
「見たいもの」ではなく客観的な真実を追求する
南極を含め、世界各地の8つの電波望遠鏡を使って2017年4月に観測したデータが、池田さんらの手元に届いたのは2018年6月。池田さんらは、少ないデータから画像をつくる新たなアルゴリズムを開発し、ブラックホールの姿を浮かび上がらせようと試行錯誤を繰り返しました。
画像化にあたって大事なのは、「画像は滑らかである」「黒い部分が多い」といったシンプルな仮定のみを用いることです。画像が「リング状であるはずだ」といった主観的な先入観を持ち込んでしまうと、予想された結果を間違って結論してしまうことになり、科学としては決して認められません。そのため、世界中の研究者が4つのチームに分かれ、お互いに結果を共有することなくあくまで独立して解析する方法がとられました。
いずれも人間が、知らず知らず抱きうる先入観を排除し、得られた結論に科学的客観性を担保する上で、非常に重要なプロセスだったと語ります。

300人の研究者が導き出した「1枚の画像」
世界20か国以上、約300人の研究者が協力し、議論を重ねて作り上げたブラックホールの画像。
2019年4月、EHTコラボレーションの研究チームは、世界6か所で同時に行われた記者会見において、巨大ブラックホールの影の存在を初めて画像で直接証明することに成功したことを発表しました。

(銀河M87中心の巨大ブラックホール Credit : EHT Collaboration)
「ブラックホールの撮影は、シャッターを押せば写るものではなく、不完全なデータから最も確からしい姿を統計的に導き出した結果です」と、池田さんは胸を張ります。
講演の最後には、今後もブラックホールの動画化への挑戦などプロジェクトが続いていることに触れ、次世代を担う若い世代に、「統計学を学ぶことで、多様なデータを通して世界を理解する手助けができる」と、エールを送りました。

さらに講演会終了後には、須藤 靖特任教授がファシリテーターとなって中高校生との交流会も開催。
「統計学の研究のモチベーションは」「天体の質量はどうやって求めるのか」「研究において主観はどこまで役に立ってどこからが無駄になるのか」など、多くの質問が寄せられ、池田さんは、その一つ一つに丁寧に回答しました。

この講演会の動画は、下記リンクよりご覧いただけます。
【動画のリンクはこちら】
また次回、第4回の「高高高知講演会」は、4月または5月の開催を予定しています。
詳細が決まり次第、本学HPなどでお知らせします。
【高高高知講演会】
※本講演会は、地域イノベーション共創機構の事業として実施しました。
【過去の「高高高知講演会」】
2025.5.15 ―高知の高校生へ最高の知を― 高高高知講演会を開催
2025.8.8 ―なんのために生まれて 何をしながら生きるがか―<第2回>高高高知講演会を開催

今回の主なターゲットは、食事やお土産物探しに、ひろめ市場を訪れた観光客です。
アプリを入れたタブレットで、気になる店舗や商品のQRコードを読み込み、「ランチでおすすめの高知名物は?」「熱燗でおいしい辛口の地酒を教えて」など、観光客が知りたいことを尋ねると、AIアバターが、即座に回答します。

データ&イノベーション学群の2年生6人が、夏ごろからPBL(課題解決型学習)の一環で、ひろめ市場31店舗と高知大丸で取り扱う商品を取材しながら準備を進めてきました。
イベントの目的は、単にアプリを一般の方に体験してもらうだけではなく、アプリをきっかけに、東西約650mに及ぶ帯屋町筋商店街の人の流れを促進すること。

イベントでは、商店街の西端にある「ひろめ市場」でアプリを体験した方には、商店街の東側にある「高知大丸」の当日のみ使用できるお買い物券を配布。商店街が江戸時代、東西で町人町、武家町に分かれていたことなどを示すチラシも一緒に渡すことで、"埋もれた名所"にも目が向くよう工夫しました。

アプリの開発に関わったデータ&イノベーション学群2年の安部 奏人さん(私立星槎国際高等学校出身)は、
「地域の皆様や商店街関係者の方々、そしてイベント用アプリのシステムを担当してくださった院生の先輩方のご協力のおかげで、本イベントは無事に実施することができました。当日は想定していたほど多くの人の関心を集められたわけではありませんでしたが、足を止めて参加してくださった方がいたことは大きな収穫であり、今後の活動につながる確かな手応えとなりました。今回の経験を通して、イベント参加に必要な"ひと手間"を減らすことの重要性を強く実感しました」と振り返り、
「今後は、より気軽に参加できる仕組みづくりに向けて、フォトスポットの候補をフィールドワークで調査し、フォトスポットを活用した、"気づいたら参加していた"といった企画に発展させて、次回の取り組みに活かしていきたいです」と抱負を語りました。

【データ&イノベーション学群の主な記事はこちら】
2024.10. 9 データ&イノベーション学群がチームワークとリーダーシップを学ぶワークショップを開催
2025.3. 7 あいおいニッセイ同和損保と包括連携協定を締結
2025.5.20 -AI等を活用し地域の課題解決を目指す- PBL第1期プロジェクトが本格始動
2025.6.25 生成AIを用いて競技中のゴルフ選手を解析 ー明徳義塾高校ゴルフ部と連携した課題解決型学習ー

膨大な数の生物種が生息する里山では、植物の開花や鳥類の渡り、昆虫の初鳴きなど四季折々の現象が観察できます。こうした季節に伴う生き物たちの活動変化は「生物季節」と呼ばれ、気候変動や環境変化の影響を評価する指標とされています。
今回のゼミナールでは、画像計測の専門家と鳥類、昆虫の専門家の3名が登壇しました。
それぞれの発表の内容や、座長による解説は、高木教授のホームページにまとめています。
詳しくは、そちらをご覧ください。

次回は、1月28日(水)17時から「里山研究フィールドでの活動報告」をテーマに、本学 大学院生が発表する予定です。
]]>この協定は、南海トラフ地震発生時に高知市及び香南市において避難所収容者数の不足が見込まれることから、災害対策基本法に基づき、香美市所在施設に迅速に広域避難を行うことを可能とするためのものです。本学は、地元 香美市のご理解とご協力により、両市からの広域避難の受け入れとして香美キャンパスの屋内外を含む2,734人を収容できるスペースを提示しました。
締結式で蝶野学長は、「今回、高知県の南海トラフ地震対策の重点課題の一つである広域避難の取り組みに参画できたことは、本学がミッションに掲げる地域社会との連携や地域貢献にもつながるものであり、とりわけ本年度からは地域共創推進に重点的に取り組んでもおり、大変意義深い。また、県民の皆様の安心・安全につながる取り組みが前進するよう、全力で取り組んでいきたいので、今後も本学をご活用いただきたい」と挨拶しました。
本学では引き続き、地域の皆様との連携を強化し、より一層地域貢献に取り組んでまいります。

▲協定書への署名を終えた蝶野学長(左端)
]]>KUT Youth Ambassadorは、まさに本学の「大使」として、海外に本学の魅力を伝えていく役割を担います。本学の学生のうち、ジョン万次郎プログラムを修了し、高度な英語力を身につけ、海外での積極的な国際交流活動の実績を持つ学生から選ばれます。
海外に興味を持ったきっかけは、幼い頃から両親のおかげで海外旅行を経験できたことです。英語学習へのMotivation Initiatorとなったのは、何よりも異文化交流です。小学校で英語を習う以前から英会話に触れていたことが、私の興味を大きく広げてくれたのだと思います。そして、コロナ禍を経験したことで、国内だけの価値観で物事を見る危うさに気づき、多角的な視点を持ちたいとよりいっそう感じました。
約半年間のチェコ共和国への正規留学は、私の視野を一気に広げてくれました。特に、海外から見た「日本」という国の姿を肌で感じられたことは、今も強く心に残っています。学修面でも、ヨーロッパにおける経済・マネジメントの考え方に触れ、より実践的で広い視野の学びを得ることができました。6人部屋での共同生活では、国ごとに価値観やロジックが異なることを実感し、多様性を理解する大切さを学びました。そして何より、仲良くなった友人たちとチェコ国外へ旅行できたことは、本当にかけがえのない思い出です。学びも挑戦も楽しさも詰まった、忘れられない留学期間となりました。
英語を用いた国際的な活躍の可能性は無限に広がっていると考えています。自分の最大の武器である英語を生かし、KUT Youth Ambassadorとして "Be active not only in Japan, but also all over the world" という中学生の頃からの目標の実現に向けて、国内外で積極的に挑戦していきます。
2026年4月から稼働する永国寺キャンパスの新棟名称を決定しました。
主として新棟を使用予定のデータ&イノベーション学群の学生から案を募り、89件91案の応募がありました。
職員投票により上位となったものを候補として、審査委員会(委員長:蝶野 成臣学長)の最終選考により以下に決定しました。
なお、当初は新棟名称として1案を採択する予定でしたが、その用途にふさわしいと審査委員会が判断したことから、フロア名称としても1案を採用しました。
採用となった2名の学生は、3月28日(土)の竣工記念式典で表彰予定です。
それぞれのコンセプトや提案者が込めた思いは以下のとおりです。
【建物名】 イノベーション ラボ棟
本学の学群名にも掲げられている「イノベーション」という理念を、学生が日常的に体現できる場にしたいという思いから、この名称を提案しました。
新棟を、学び・研究・企業連携が交錯し、情熱ある挑戦が次々と生まれる"実験場"として位置づけたいと考えました。ここで育つ一つ一つの挑戦が未来を動かす革新へとつながる--その願いを込めて「イノベーション ラボ」と名付けました。
データ&イノベーション学群 2年 川上 千歩(かわかみ ちほ)さん(兵庫県立尼崎北高等学校出身)
【1階フロア名】 リグルバ(RIGURUBA)
高知のことばで「こだわる、念入りにする」を意味する「りぐる」と、多様な活動の「場(バ)」を組み合わせました。
「りぐって」研究や制作に取り組み、「学ぶ・つくる・見せる」が連続するイノベーションの「場」として
学生たちの「日常」と「こだわり」が重なる拠点を表現しました。
イノベーションの海へ「帆を張り(Rig)」、漕ぎ出す「場」という意味もあります。
データ&イノベーション学群 2年 遠矢 和子(とおや わこ)さん(愛媛県立北宇和高等学校出身)
新棟の概要
■建設場所: 高知市永国寺町145番地
■建設規模: 地上5階建 S造 建築面積 1013㎡ 延床面積 4327㎡
■設計・監理: 内藤・杢建築事務所設計共同企業体
■施工: 建築主体工事... 宮崎・三谷特定建設工事共同企業体
建築電気設備工事... 荒川電工・高知クリエイト特定建設工事共同企業体
建築機械設備工事... 高知クリエイト・関西設備特定建設工事共同企業体
高知市の文教地区である永国寺町に相応しいシンプルで落ち着いた雰囲気にデザインされた新棟は、データサイエンスを含む先端ICT技術を学び、使いこなし、有用な情報から新たな価値を創造できる文理統合型のDX人材育成・輩出の場として、産学官連携・高大連携の拠点となります。
データ&イノベーション学群における重要な教育の柱となるPBL(課題解決型学習)を円滑に行うために、講義から討議、そして実装までを1フロアでシームレスに作業転換ができるようなエリア設計としています。
今回フロア名称を付した1階は、コワーキングスペースやXRラボに加え、ラウンジ(カフェ)を備え、イベントやセミナーにフレキシブルに対応できるプレゼンコートを含む大空間としており、地域の方々や企業等との交流の場として、全学的に使用していきます。
2階はおもに講義で使用。3・4階は研究活動(研究室)のフロア。5階には教員室が配置されます。
▼1階フロア(イメージ)

▼2階フロア(イメージ)

このランキングは、学問分野の境界を越えた学際的な科学研究への貢献と取り組みを測定・評価するもので、研究プロジェクトの各段階「インプット(資金)」「プロセス(成果を測るための基準、施設等)」「アウトプット(出版物、研究の質等)」の3分野でランク付けされ、今回は、世界の94の国・地域から911の大学(うち、日本は33校)が対象となりました。
本学は今後も、分野の垣根を越え、新たな価値を生み出す研究で、世界をリードしていきます。
〈参考サイト〉
Interdisciplinary Science Rankings 2026
THE学際的科学ランキング2026特集ページ

今回、島田さんが発表したのは「分子内ハロゲンーハロゲン相互作用を志向したねじれD-A型π共役分子」についてです。
塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)といったハロゲン原子には、σ(シグマ)ホールと呼ばれる電子が相対的に少なく、正に帯電しているように振る舞う電子不足領域が存在します。これに由来してハロゲン原子は、他原子との間でハロゲン結合を示すことが知られています。このハロゲン結合は主に分子間の相互作用として注目されており、分子配向の制御や、医薬品の開発などで用いられてきました。
島田さんは、このハロゲン結合を"分子間"ではなく、"分子内部"で起こすことにより、これまでにない新しい性質や機能の創出をめざして研究を行いました。分子内においてハロゲン結合を作ることを目的とした分子を設計し、実際に分子の合成を行ったところ、分子内部でのハロゲン結合により構造が大きくねじれるように湾曲していることが示されました。
発表では、このような特異な分子の形がどのように生じるか、またそのメカニズムについての考察を述べました。

受賞を受けて、島田さんは「今回は、様々な分野の研究者が集まった大会だったので、そこで認められたということは、わかりやすい発表が行えたと自信になりました。研究を進めるにあたり、様々な視点でアドバイスをくれた林研究室の皆さんに感謝いたします。今後は、ねじれのダイナミクスの解明や、分子内相互作用に由来する新たな機能をめざし、研究していきたいです」と喜びと抱負を語りました。
]]>12月1日の点灯開始以降も、クリスマスイベントでピークに達するように運営委員会が装飾エリアを拡大し、ご家族連れら約200名の参加者を出迎えました。

クリスマスソングを中心とした吹奏楽部の演奏で始まったステージイベントは、ジャグリング部、ピアノ同好会、よさこい踊り子隊が順に盛り上げていきました。サンタクロースに扮した学生たちも、フォトスポットとなったキャンパスのいたるところに現れて、クリスマス気分を演出します。
温かいものからスイーツまでが揃ったキッチンカーにも多くの人々が行列をつくりました。

今年のクリスマスイベントでは、ふたつの目玉企画が用意されました。
ひとつが、シンボルタワーへ投影するプロジェクションマッピング。情報学群の学生有志により、この日のために7月から準備を進めてきたそうで、プロジェクトの代表を務めた大塚 笑理さん(情報学群3年・和歌山県・開智高等学校出身)は、
「約半年間、企画から映像制作まで試行錯誤を重ねてきました。思うように進まないことも多く、何度も立ち止まりましたが、仲間と一緒に悩み、乗り越え、ようやく形にすることができました。多くの方にご覧いただき、笑ったり楽しんでいただけたことを、心から嬉しく思います。」
と、その苦労を振り返りました。

▲シンボルタワーに投影されたプロジェクションマッピング(複数画像を合成加工)▲
そして、フィナーレを飾ったのが、スカイランタン。
LEDが仕込まれヘリウムを充填したランタンに、来場者が思い思いの願い事や家族へのメッセージを書き込んでいました。
50個のランタンが夜空に浮揚するさまは、とても幽玄的で、「夜香楽」と名付けた今年のキャンパスイルミネーションのテーマをも象徴するエンディングとなりました。



昨年に続いてこのイベントを企画・運営したKUT+illumination 運営委員会副代表の野瀬 慈仁さん(システム工学群3年・岡山県・私立明誠学院高等学校出身)は、
「香美市の冬の風物詩となる高知工科大学クリスマスイベント2025では、昨年よりもイルミネーションを充実させるとともに、香美市の観光施設である龍河洞とのコラボ企画やスカイランタンの打ち上げなど、新たな取り組みにも挑戦しました。また、プロジェクションマッピングの投影や学内文化系団体による演奏など、学生同士の繋がりを深める企画も実施し、規模を拡大して開催することができました。
当日は大人から子どもまで多くの方にご来場いただき、世代を超えた交流が生まれる場となりました。地域の皆さまと共に準備を進めてきたイベントが、多くの笑顔につながったことを、学生一同大変嬉しく思っています。「夜香楽」をテーマに、高知工科大学に灯されたイルミネーションを、ぜひ引き続きお楽しみください。」
と、充実した表情で感謝を述べていました。
KUT+illumination'25 は、1月9日まで開催しています。
]]>窓口および、電話・メールなどでのお問い合わせに対応できません。ご了承くださいますようお願いいたします。
インターネット出願の導入に伴い、学生募集要項はホームページに掲載し、冊子での発行はしておりません。
学生募集要項はこちらからダウンロードできます。
休業中は、窓口対応などに加え、証明書自動発行機の利用もできません。
就職活動などで各種証明書が必要となる場合は、早めの準備をお願いします。
※申請期限などは、ポータルシステムの通知内容をご確認ください。
学生ポスター発表では、研究に対して発表者が十分に寄与している点、質疑応答に優れている点および独自性に優れ今後の発展が期待できる点について審査が行われ、7分野1,031件の発表のうち188件が「優秀ポスター発表賞」に選出されました。
同賞の受賞は、樋野さんが5年連続、中林さんが3年連続、矢野さんが2年連続になります。
過去にCSJ化学フェスタでポスター発表賞を受賞している場合は、既に発表した内容からの進展や新規性が認められることが受賞の要件となっており、毎年新しい成果を出し続けていると評価されたと言えます。
クロスオーバーアライアンスとは、5つの国⽴⼤学(北海道大学・東北大学・東京科学大学・大阪大学・九州大学)の研究所が、それぞれの得意分野で連携・ネットワークを組み、分野横断的に社会課題解決をめざす共同研究ネットワークです。
同研究会の世話人を務めた、総合研究所・理工学群 林 正太郎教授にインタビューしました。
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――近年、いわゆるPI(Principal Investigator:研究代表者/プロジェクトリーダー)同士の交流を促進する流れにあり、活発化しています。こういった研究者間交流が重要視される背景や意義について、個人的見解を。
▶ 年々研究の学際化が進んでいる一方、物質の設計から計測〜評価まで様々なエキスパートが様々な学会・研究会に散らばってしまっているように感じます。PI間のディープな交流による意見交換や共同研究が推進できれば、測定支援や装置の貸し借りに留まらない研究加速効果が期待でき、永続的な研究力(学生が関われば教育力)向上につながるものと思います。
――たしかに、KUTでも、従来の「分野別・個別研究室中心」の大学研究モデルに発展性を持たせるべく、今年度に総合研究所が改組し、領域・センターを超えて研究者同士の交流機会が設けられるなどしています。「オープン化」「研究インテグリティ」「社会実装」を意識した運営がスタートし、「世界中から研究者が交流と協同を求めて参集するような学際的研究ネットワークの結節点」をめざすことになりました。林先生も、総合研究所柔軟性有機分子集合体研究センターのセンター長として意識されていることは?
▶ まず、本学総合研究所のような多様な分野のPIが一つの研究所に所属するようになったことで、その価値観の共有や研究交流が加速されれば、学際化(横断的)に進む研究活動において国内研究拠点のロールモデルとして働くことが期待されます。合わせて、各分野で尖った挑戦的研究を展開し、プレゼンスを示さなければいけません。この挑戦は大学の価値を広く発信する重要な要素ですので、私としてはセンターの活動として社会に"見える化"される大きな成果を目指しています。尊敬する先生の言葉を借りると「常にホームランを狙わなあかん!」です。具体的に意識しているのは、学術において毎年"ハイライト"となるようなトップジャーナルへの掲載、産業においては社会還元を軸とした事業化への試みです。これらは重要なプロモーションとなり、追ってハイレベルなネットワーク環境を求めて高知へ向かう研究者、学生の教育成果としても主体的・能動的な活動力という形で目に見えてくるはずです。
――学際・融合研究の促進、ネットワーク形成いずれも必要なのですね。KUTが国際的に研究を展開していくうえでの拠点となるための鍵は?
▶ まず理想を言えば、高い学術的専門性に留まらない飛び抜けたアイディアを持った多くの研究者が必要だと感じます。研究は端的に言うと「ブレイクスルーを示したか?」が重要で、これを示さなければ研究提案だけでなく、研究成果を世に出した際も注目してくれません。卓越した成果を期待して採択してくれるJSTやNEDOなどといった研究支援機関は、研究展開へ向けて積極的にプロモーションしてくれますので、支援対象となる研究者が増えることが大切なことの一つです。二つ目は、国内外における研究者(または研究室)のブランド力です。例えば、昨年度から今年度にかけて6カ国の研究者で形成される国際共同研究に挑戦し、アメリカ化学会のJournal of the American Chemical Societyに掲載されました。主要著者として名を連ねましたが、これまでの研究において尖った成果を出し続けてきた結果と捉えています。また、今年のハイライトは、研究室単独でNature Communicationsに掲載されるまで徹底的に結果を練り上げたことです。主体的または主要な立場でハイインパクトな論文を発表すれば、国内外における研究機関の注目度が増し、総合研究所が国際的な研究拠点として機能する道筋が見えてきます。
――クロスオーバーアライアンスも、それらの趣旨に則って展開されているものと推察しますが、そもそも5つの国立大学法人の研究所で構成される同組織が、本学で分科会を開催した経緯は?
▶ アクティブな研究者は常に"非日常"の中で研究に対する情熱を燃やす傾向にあります(と個人的に思います)。アライアンスメンバーの方が"高知県が大好き"だったことと私がこれまで新学術領域(現在では、学術変革領域)やJST創発的研究支援事業において他大学の附属研究所の主要研究者と共同研究や研究会開催などの交流を行っていたことが今回の発端です。高知大学にも関連する先生がいらっしゃいましたので、参画していただく形で高知工科大学開催となりました。
――今回、本学で開催されたことで得られたことや、今後の展望は?
▶ ここでは、様々なプロジェクトを抱えたアライアンスメンバーとの交流に加え、本学の雰囲気、高知県にいる研究者のアクティビティをプロモーションできたことが最大の成果です。本学総合研究所の学際性が挑戦性を伴って機能すれば、これを起点に高知工科大学の教育研究活動が大きく発信できるのではないかと思います。
今回開催のエキスパート研究会では、冒頭、蝶野 成臣学長の挨拶から始まり、参加者の研究紹介では、本学から、林教授、大谷 政孝教授、古田 寛教授、曲 勇作講師、山本 哲也教授が登壇しました。
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同賞は、55件のポスター発表の中から、優れた発表と認められた4件に贈られました。
今回、矢野さんの発表したポスターのタイトルは「フッ素を鍵とした超分子構造設計に基づく二次元弾性分子結晶の開発」です。
矢野さんらは、これまでの研究で、優れた柔軟性と光・電気特性を併せ持つ二次元弾性分子結晶の作製に成功しています。この分子結晶を工業用材料へ応用するためには、常に同じクオリティでの作製が求められ、矢野さんは、その再現性を高めるためのメカニズムを追究しました。
結晶は、分子同士が互いに引きつけ合う力により一つの形を形成しています。この相互作用が強すぎると結晶が硬くなりすぎて曲がらず、弱すぎると結合が解けて結晶が脆く崩れてしまいます。
そこで、矢野さんは、強い相互作用と弱い相互作用が共存する構造に着目し、新たに2種類の分子結晶を設計しました。その結果、これらの結晶は二方向への変形が可能な二次元弾性を示しました。さらに、この設計において、官能基としてのフッ素が極めて重要な役割を果たすことを明らかにしました。
受賞を受けて、矢野さんは「今回初めて、自分の研究分野とは異なる学会に参加させていただきました。半導体薄膜や有機合成など自分とは異なる研究分野を専門とする研究者、さまざまな業界の方々が集まる中で、フッ素を使った新規有機材料の開発を評価していただけたことを大変嬉しく思います。さまざまな角度からの質問があり、新鮮な議論ができました。曲がる結晶を作ることができたので、今後は、それらが社会実装されるように、結晶の光・電気特性の性能を高めるような研究をしたいです」と話しました。
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