2026年4月から稼働する永国寺キャンパスの新棟名称を決定しました。
主として新棟を使用予定のデータ&イノベーション学群の学生から案を募り、89件91案の応募がありました。
職員投票により上位となったものを候補として、審査委員会(委員長:蝶野 成臣学長)の最終選考により以下に決定しました。
なお、当初は新棟名称として1案を採択する予定でしたが、その用途にふさわしいと審査委員会が判断したことから、フロア名称としても1案を採用しました。
採用となった2名の学生は、3月28日(土)の竣工記念式典で表彰予定です。
それぞれのコンセプトや提案者が込めた思いは以下のとおりです。
【建物名】 イノベーション ラボ
本学の学群名にも掲げられている「イノベーション」という理念を、学生が日常的に体現できる場にしたいという思いから、この名称を提案しました。
新棟を、学び・研究・企業連携が交錯し、情熱ある挑戦が次々と生まれる"実験場"として位置づけたいと考えました。ここで育つ一つ一つの挑戦が未来を動かす革新へとつながる--その願いを込めて「イノベーション ラボ」と名付けました。
データ&イノベーション学群 2年 川上 千歩(かわかみ ちほ)さん(兵庫県立尼崎北高等学校出身)
【1階フロア名】 リグルバ(RIGURUBA)
高知のことばで「こだわる、念入りにする」を意味する「りぐる」と、多様な活動の「場(バ)」を組み合わせました。
「りぐって」研究や制作に取り組み、「学ぶ・つくる・見せる」が連続するイノベーションの「場」として
学生たちの「日常」と「こだわり」が重なる拠点を表現しました。
イノベーションの海へ「帆を張り(Rig)」、漕ぎ出す「場」という意味もあります。
データ&イノベーション学群 2年 遠矢 和子(とおや わこ)さん(愛媛県立北宇和高等学校出身)
新棟の概要
■建設場所: 高知市永国寺町145番地
■建設規模: 地上5階建 S造 建築面積 1013㎡ 延床面積 4327㎡
■設計・監理: 内藤・杢建築事務所設計共同企業体
■施工: 建築主体工事... 宮崎・三谷特定建設工事共同企業体
建築電気設備工事... 荒川電工・高知クリエイト特定建設工事共同企業体
建築機械設備工事... 高知クリエイト・関西設備特定建設工事共同企業体
高知市の文教地区である永国寺町に相応しいシンプルで落ち着いた雰囲気にデザインされた新棟は、データサイエンスを含む先端ICT技術を学び、使いこなし、有用な情報から新たな価値を創造できる文理統合型のDX人材育成・輩出の場として、産学官連携・高大連携の拠点となります。
データ&イノベーション学群における重要な教育の柱となるPBL(課題解決型学習)を円滑に行うために、講義から討議、そして実装までを1フロアでシームレスに作業転換ができるようなエリア設計としています。
今回フロア名称を付した1階は、コワーキングスペースやXRラボに加え、ラウンジ(カフェ)を備え、イベントやセミナーにフレキシブルに対応できるプレゼンコートを含む大空間としており、地域の方々や企業等との交流の場として、全学的に使用していきます。
2階はおもに講義で使用。3・4階は研究活動(研究室)のフロア。5階には教員室が配置されます。
▼1階フロア(イメージ)

▼2階フロア(イメージ)

このランキングは、学問分野の境界を越えた学際的な科学研究への貢献と取り組みを測定・評価するもので、研究プロジェクトの各段階「インプット(資金)」「プロセス(成果を測るための基準、施設等)」「アウトプット(出版物、研究の質等)」の3分野でランク付けされ、今回は、世界の94の国・地域から911の大学(うち、日本は33校)が対象となりました。
本学は今後も、分野の垣根を越え、新たな価値を生み出す研究で、世界をリードしていきます。
〈参考サイト〉
Interdisciplinary Science Rankings 2026
THE学際的科学ランキング2026特集ページ

今回、島田さんが発表したのは「分子内ハロゲンーハロゲン相互作用を志向したねじれD-A型π共役分子」についてです。
塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)といったハロゲン原子には、σ(シグマ)ホールと呼ばれる電子が相対的に少なく、正に帯電しているように振る舞う電子不足領域が存在します。これに由来してハロゲン原子は、他原子との間でハロゲン結合を示すことが知られています。このハロゲン結合は主に分子間の相互作用として注目されており、分子配向の制御や、医薬品の開発などで用いられてきました。
島田さんは、このハロゲン結合を"分子間"ではなく、"分子内部"で起こすことにより、これまでにない新しい性質や機能の創出をめざして研究を行いました。分子内においてハロゲン結合を作ることを目的とした分子を設計し、実際に分子の合成を行ったところ、分子内部でのハロゲン結合により構造が大きくねじれるように湾曲していることが示されました。
発表では、このような特異な分子の形がどのように生じるか、またそのメカニズムについての考察を述べました。

受賞を受けて、島田さんは「今回は、様々な分野の研究者が集まった大会だったので、そこで認められたということは、わかりやすい発表が行えたと自信になりました。研究を進めるにあたり、様々な視点でアドバイスをくれた林研究室の皆さんに感謝いたします。今後は、ねじれのダイナミクスの解明や、分子内相互作用に由来する新たな機能をめざし、研究していきたいです」と喜びと抱負を語りました。
]]>12月1日の点灯開始以降も、クリスマスイベントでピークに達するように運営委員会が装飾エリアを拡大し、ご家族連れら約200名の参加者を出迎えました。

クリスマスソングを中心とした吹奏楽部の演奏で始まったステージイベントは、ジャグリング部、ピアノ同好会、よさこい踊り子隊が順に盛り上げていきました。サンタクロースに扮した学生たちも、フォトスポットとなったキャンパスのいたるところに現れて、クリスマス気分を演出します。
温かいものからスイーツまでが揃ったキッチンカーにも多くの人々が行列をつくりました。

今年のクリスマスイベントでは、ふたつの目玉企画が用意されました。
ひとつが、シンボルタワーへ投影するプロジェクションマッピング。情報学群の学生有志により、この日のために7月から準備を進めてきたそうで、プロジェクトの代表を務めた大塚 笑理さん(情報学群3年・和歌山県・開智高等学校出身)は、
「約半年間、企画から映像制作まで試行錯誤を重ねてきました。思うように進まないことも多く、何度も立ち止まりましたが、仲間と一緒に悩み、乗り越え、ようやく形にすることができました。多くの方にご覧いただき、笑ったり楽しんでいただけたことを、心から嬉しく思います。」
と、その苦労を振り返りました。

▲シンボルタワーに投影されたプロジェクションマッピング(複数画像を合成加工)▲
そして、フィナーレを飾ったのが、スカイランタン。
LEDが仕込まれヘリウムを充填したランタンに、来場者が思い思いの願い事や家族へのメッセージを書き込んでいました。
50個のランタンが夜空に浮揚するさまは、とても幽玄的で、「夜香楽」と名付けた今年のキャンパスイルミネーションのテーマをも象徴するエンディングとなりました。



昨年に続いてこのイベントを企画・運営したKUT+illumination 運営委員会副代表の野瀬 慈仁さん(システム工学群3年・岡山県・私立明誠学院高等学校出身)は、
「香美市の冬の風物詩となる高知工科大学クリスマスイベント2025では、昨年よりもイルミネーションを充実させるとともに、香美市の観光施設である龍河洞とのコラボ企画やスカイランタンの打ち上げなど、新たな取り組みにも挑戦しました。また、プロジェクションマッピングの投影や学内文化系団体による演奏など、学生同士の繋がりを深める企画も実施し、規模を拡大して開催することができました。
当日は大人から子どもまで多くの方にご来場いただき、世代を超えた交流が生まれる場となりました。地域の皆さまと共に準備を進めてきたイベントが、多くの笑顔につながったことを、学生一同大変嬉しく思っています。「夜香楽」をテーマに、高知工科大学に灯されたイルミネーションを、ぜひ引き続きお楽しみください。」
と、充実した表情で感謝を述べていました。
KUT+illumination'25 は、1月9日まで開催しています。
]]>窓口および、電話・メールなどでのお問い合わせに対応できません。ご了承くださいますようお願いいたします。
インターネット出願の導入に伴い、学生募集要項はホームページに掲載し、冊子での発行はしておりません。
学生募集要項はこちらからダウンロードできます。
休業中は、窓口対応などに加え、証明書自動発行機の利用もできません。
就職活動などで各種証明書が必要となる場合は、早めの準備をお願いします。
※申請期限などは、ポータルシステムの通知内容をご確認ください。
学生ポスター発表では、研究に対して発表者が十分に寄与している点、質疑応答に優れている点および独自性に優れ今後の発展が期待できる点について審査が行われ、7分野1,031件の発表のうち188件が「優秀ポスター発表賞」に選出されました。
同賞の受賞は、樋野さんが5年連続、中林さんが3年連続、矢野さんが2年連続になります。
過去にCSJ化学フェスタでポスター発表賞を受賞している場合は、既に発表した内容からの進展や新規性が認められることが受賞の要件となっており、毎年新しい成果を出し続けていると評価されたと言えます。
クロスオーバーアライアンスとは、5つの国⽴⼤学(北海道大学・東北大学・東京科学大学・大阪大学・九州大学)の研究所が、それぞれの得意分野で連携・ネットワークを組み、分野横断的に社会課題解決をめざす共同研究ネットワークです。
同研究会の世話人を務めた、総合研究所・理工学群 林 正太郎教授にインタビューしました。
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――近年、いわゆるPI(Principal Investigator:研究代表者/プロジェクトリーダー)同士の交流を促進する流れにあり、活発化しています。こういった研究者間交流が重要視される背景や意義について、個人的見解を。
▶ 年々研究の学際化が進んでいる一方、物質の設計から計測〜評価まで様々なエキスパートが様々な学会・研究会に散らばってしまっているように感じます。PI間のディープな交流による意見交換や共同研究が推進できれば、測定支援や装置の貸し借りに留まらない研究加速効果が期待でき、永続的な研究力(学生が関われば教育力)向上につながるものと思います。
――たしかに、KUTでも、従来の「分野別・個別研究室中心」の大学研究モデルに発展性を持たせるべく、今年度に総合研究所が改組し、領域・センターを超えて研究者同士の交流機会が設けられるなどしています。「オープン化」「研究インテグリティ」「社会実装」を意識した運営がスタートし、「世界中から研究者が交流と協同を求めて参集するような学際的研究ネットワークの結節点」をめざすことになりました。林先生も、総合研究所柔軟性有機分子集合体研究センターのセンター長として意識されていることは?
▶ まず、本学総合研究所のような多様な分野のPIが一つの研究所に所属するようになったことで、その価値観の共有や研究交流が加速されれば、学際化(横断的)に進む研究活動において国内研究拠点のロールモデルとして働くことが期待されます。合わせて、各分野で尖った挑戦的研究を展開し、プレゼンスを示さなければいけません。この挑戦は大学の価値を広く発信する重要な要素ですので、私としてはセンターの活動として社会に"見える化"される大きな成果を目指しています。尊敬する先生の言葉を借りると「常にホームランを狙わなあかん!」です。具体的に意識しているのは、学術において毎年"ハイライト"となるようなトップジャーナルへの掲載、産業においては社会還元を軸とした事業化への試みです。これらは重要なプロモーションとなり、追ってハイレベルなネットワーク環境を求めて高知へ向かう研究者、学生の教育成果としても主体的・能動的な活動力という形で目に見えてくるはずです。
――学際・融合研究の促進、ネットワーク形成いずれも必要なのですね。KUTが国際的に研究を展開していくうえでの拠点となるための鍵は?
▶ まず理想を言えば、高い学術的専門性に留まらない飛び抜けたアイディアを持った多くの研究者が必要だと感じます。研究は端的に言うと「ブレイクスルーを示したか?」が重要で、これを示さなければ研究提案だけでなく、研究成果を世に出した際も注目してくれません。卓越した成果を期待して採択してくれるJSTやNEDOなどといった研究支援機関は、研究展開へ向けて積極的にプロモーションしてくれますので、支援対象となる研究者が増えることが大切なことの一つです。二つ目は、国内外における研究者(または研究室)のブランド力です。例えば、昨年度から今年度にかけて6カ国の研究者で形成される国際共同研究に挑戦し、アメリカ化学会のJournal of the American Chemical Societyに掲載されました。主要著者として名を連ねましたが、これまでの研究において尖った成果を出し続けてきた結果と捉えています。また、今年のハイライトは、研究室単独でNature Communicationsに掲載されるまで徹底的に結果を練り上げたことです。主体的または主要な立場でハイインパクトな論文を発表すれば、国内外における研究機関の注目度が増し、総合研究所が国際的な研究拠点として機能する道筋が見えてきます。
――クロスオーバーアライアンスも、それらの趣旨に則って展開されているものと推察しますが、そもそも5つの国立大学法人の研究所で構成される同組織が、本学で分科会を開催した経緯は?
▶ アクティブな研究者は常に"非日常"の中で研究に対する情熱を燃やす傾向にあります(と個人的に思います)。アライアンスメンバーの方が"高知県が大好き"だったことと私がこれまで新学術領域(現在では、学術変革領域)やJST創発的研究支援事業において他大学の附属研究所の主要研究者と共同研究や研究会開催などの交流を行っていたことが今回の発端です。高知大学にも関連する先生がいらっしゃいましたので、参画していただく形で高知工科大学開催となりました。
――今回、本学で開催されたことで得られたことや、今後の展望は?
▶ ここでは、様々なプロジェクトを抱えたアライアンスメンバーとの交流に加え、本学の雰囲気、高知県にいる研究者のアクティビティをプロモーションできたことが最大の成果です。本学総合研究所の学際性が挑戦性を伴って機能すれば、これを起点に高知工科大学の教育研究活動が大きく発信できるのではないかと思います。
今回開催のエキスパート研究会では、冒頭、蝶野 成臣学長の挨拶から始まり、参加者の研究紹介では、本学から、林教授、大谷 政孝教授、古田 寛教授、曲 勇作講師、山本 哲也教授が登壇しました。
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同賞は、55件のポスター発表の中から、優れた発表と認められた4件に贈られました。
今回、矢野さんの発表したポスターのタイトルは「フッ素を鍵とした超分子構造設計に基づく二次元弾性分子結晶の開発」です。
矢野さんらは、これまでの研究で、優れた柔軟性と光・電気特性を併せ持つ二次元弾性分子結晶の作製に成功しています。この分子結晶を工業用材料へ応用するためには、常に同じクオリティでの作製が求められ、矢野さんは、その再現性を高めるためのメカニズムを追究しました。
結晶は、分子同士が互いに引きつけ合う力により一つの形を形成しています。この相互作用が強すぎると結晶が硬くなりすぎて曲がらず、弱すぎると結合が解けて結晶が脆く崩れてしまいます。
そこで、矢野さんは、強い相互作用と弱い相互作用が共存する構造に着目し、新たに2種類の分子結晶を設計しました。その結果、これらの結晶は二方向への変形が可能な二次元弾性を示しました。さらに、この設計において、官能基としてのフッ素が極めて重要な役割を果たすことを明らかにしました。
受賞を受けて、矢野さんは「今回初めて、自分の研究分野とは異なる学会に参加させていただきました。半導体薄膜や有機合成など自分とは異なる研究分野を専門とする研究者、さまざまな業界の方々が集まる中で、フッ素を使った新規有機材料の開発を評価していただけたことを大変嬉しく思います。さまざまな角度からの質問があり、新鮮な議論ができました。曲がる結晶を作ることができたので、今後は、それらが社会実装されるように、結晶の光・電気特性の性能を高めるような研究をしたいです」と話しました。
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濵口さんは高知市出身で、本学卒業後は東京都内のIT企業に入社したのち、高知市内の会社に転職し、訪問営業などを経験。25歳のとき「高知で働ける場所をつくりたい」と、家庭用の蓄電池や太陽光パネルなどを営業販売する会社を起こしました。
設立から3年となる現在では、売り上げは1期目の15倍以上、中四国の6事業所のほか東京にも進出し、わずか2名で立ち上げた会社は従業員約100名を抱えるまで急成長を遂げています。
本講義において濵口さんは、新しい「ビジネスモデル」のつくり方など、自身の体験を踏まえたノウハウを紹介するとともに、「大学生だからこそできる時間の使い方」や「未来を自分でつくっていくために大事なこと」について、自らを振り返りながら語りました。

在学中は、県立大と初の永国寺キャンパスでの大学間交流行事となった「大交流会」を企画運営したり、ソフトテニス部の練習に夢中になったり、友だちと飲み歩いたりと「授業よりも遊びに夢中だった」と振り返る濵口さん。

(▲ 2018年「大交流会」を企画した経済・マネジメント学群の4年生5名/左から2人目が濵口さん)
今、一番後悔していることとして「『時間』と『柔軟な発想』がある学生時代のうちに、もっと勉強したかった」と語り、学生のうちに基本的な知識や考え方を身に着ける大切さと、小さくても良いから挑戦を始めること、そして同じ志を持つ仲間を集めることの重要性を伝えました。

また起業をはじめ、会社を成長させるのに一番大事だったというのが「行動力」です。例えば、起業当初、会社経営に必要な人脈も全くなかったなかで、SNSなどでちょっとでも気になった人には連絡をとり、会って関係性を築くなかで、成功の秘密を聞き出したり、次のビジネスの種を見つけたりできたといいます。

講義後半では、学生たちが「なぜ濵口さんの会社は成功したのか」をテーマにグループワークを実施。
各グループごとに「地方の弱みを強みに変える発想力」「派手な戦略ではなく、まずは小さくビジネスを始めたこと」「社長自身の情熱が社員や顧客に伝播したこと」など、成長の要因を発表しました。
これに対し濵口社長は、「自分が大切にしていることが伝わっていて嬉しい」と笑顔を見せ、「高知県を代表する会社を作り、雇用を生み出すことで地域を盛り上げたい。皆さんも一歩踏み出す勇気を持ってほしい」と締めくくりました。
※本特別講義は、PSI事業の一環として日本政策金融公庫の協力で実施しました。

今回は、世界の115の国・地域から過去最多の2191校(うち、日本は115校)が対象となりました。ランキングの指標は、Teaching(教育)、Research environment(研究環境)、Research quality(研究の質)、Industry(産業界)、International outlook(国際性)の5つの観点から、総合的な評価が行われました。
本学は、特に「industry(産業界)」で高いスコアを獲得。産業界からの研究関連収入および特許に引用された論文数を基に算出されており、商業市場に革新や発明、コンサルティングを提供する能力が高く評価されています。
【本学の総合順位】
国内順位:52位タイ(公立大学の中では8位)
世界順位:1501位+
本学は今後も、質の高い学びを提供し、先端的な研究を深めることで、国際社会の発展に貢献していきます。
〈参考サイト〉
THE世界大学ランキング2026特集ページ
World University Rankings 2026(英語)
「住宅特集」は、最新の住宅作品や設計思想を写真と図面で紹介する、日本を代表する住宅専門の建築雑誌です。建築分野では、学位を取得する際に、建築学会の査読付き論文を2、3本採用されることが条件となることが多いですが、「住宅特集」への掲載を査読付き論文とみなして学位認定する大学があるほど権威ある専門誌で、多くの建築家が同誌への掲載を目標にしています。
最新号では、地球や周辺地域の環境に配慮しながら住む人の快適性や健康を損なわない、環境への配慮と住みやすさを両立する住宅『環境住宅』について特集されており、建築家の実験的な住宅作品の一つとして、渡辺教授の「ゲンダイタテアナ」が紹介されています。
「ゲンダイタテアナ」は、竪穴式住居を原点に据え、建物の中心にある、冬期集熱と夏期夜間の通風による蓄冷を担う土間を居住空間とは一線を画す自由な空間「ウチニワ」とした渡辺教授の挑戦的な作品です。
詳しくは、こちらの記事で紹介しています。
→渡辺 菊眞教授が国際建築賞WA Awardで2回連続の受賞(2025.5.13)
アントラセン[4+4]光環化付加反応(*1)について、
① 「光」と「熱」という2つの物理パラメータを使って、反応速度と、反応の開始と停止を自在に制御することに成功。光と熱による"二重制御システム"を構築しました。
② ①の結果、反応速度を大幅に低下させることが可能となり、反応途中の中間状態の分子構造を単結晶X線構造解析(*2)により可視化することに成功しました。これは、世界初の事例です。
③ 入射する光の進行方向と分子の配向に関連があることを実証。光の照射方向により、反応の進行と停止を制御できることを明らかにしました。
アントラセンは、炭化水素化合物の一つで、発光性と反応速度が高いという性質を併せ持つため、古くから広く研究されてきた有機化合物です。「化学者に最も愛されている化合物」と言っても過言ではなく、その応用範囲は、化学・物理・生命科学を横断します。
なかでも、アントラセンの[4+4]光環化付加反応は、1867年に初めて観測されたと報告され、光アクチュエーター、接着材料、クロミック材料など多様な光機能性材料の基盤となってきました。しかし、この反応に伴う構造変化は有機化学の教科書に掲載されるほどよく知られたものであるものの、10⁻⁸〜10⁻⁶秒(1億分の1から100万分の1秒)という極限的短時間で起こるため、その制御と可視化は長年、"基礎化学の未踏領域"とされてきました。本研究成果は、その可視化成功により、150年以上にわたり「当たり前」とされてきた化学反応を、あらためて「常識」として理解できるレベルで実証したものと言えます。
本研究は、高知工科大学の樋野 優人さん(博士後期課程 基盤工学コース 2年)、松尾 匠助教、林 正太郎教授の研究グループが行ったもので、同グループは、これまで結晶学的に精密設計したアントラセン誘導体に着目し、これまでに結晶光化学の新領域を切り開いてきました(*3)。今回は、このアントラセン[4+4]光環化付加反応について、光と熱という2つの刺激によって反応速度と、反応の開始・停止を自在に制御する"二重制御システム"を構築し、その結果、反応速度を大幅に遅らせることが可能となり、反応途中の中間状態を世界で初めて直接可視化することに成功しました。
この成果は、2025年11月26日「Nature Communications」に掲載されました。
コメント
「今回、この世界的研究成果を高い査読透明性のもとで評価を得たいと考え、Transparent Peer Reviewを採用するNature Publishingに投稿しました。我々のグループが持っている独自のアイディアと化学現象に対する飽くなき探究心が編集者・審査員側からの極めて高い評価を得るとともに、基礎科学における新しい知見が広く公開されたことを喜ばしく思います。さらに、樋野くんの膨大な実験量と洞察には目を見張るものがあり、今後の活躍が楽しみです」(林教授)
「私たちは『単結晶中でどのように分子が配向・配列すれば、分子間光化学反応が定量的に進行するか』という問いから、研究をスタートしました。ポイントとなる"分子配向・配列"に必要だったのは、アントラセン誘導体の分子形状と電子的性質です。今回の報告は、置換基を調整することで光反応活性な結晶構造を誘導し、光と温度制御により"反応中間状態の可視化"が可能となりました。特に、反応物から光生成物へと変換される段階的な過程を結晶学的に確認できた瞬間の感動は忘れられません。本成果は、有機分子系の材料開発に向けて新たな視点を与えると考えています。今後も、多くの人を魅了するシンプルで構造美がある"アントラセン誘導体"の研究成果を出せるように頑張ります」(樋野さん)
用語解説など
*1)[4+4]光環化付加反応
単量体(*4)が光によって二量体(*4)に変化する反応。教科書にも定番で記載され、様々な学術研究や材料研究で利用されている。特に、光応答性材料として、アクチュエーターや自己修復、接着材料において需要が高い。
*2)単結晶X線構造解析
X線回折を利用して単結晶中の原子の三次元配置を精密に決定する手法。分子およびその集合体構造を解析するための最も強力な手法の一つ。
*3)高知工科大学 2021年11月5日リリース 「分子結晶でドミノの様な単結晶-単結晶相転移の実現~熱刺激を引き金とした緩やかな相変化~」
掲載論文
題 名:Trans-scale crystal dynamics for controlling kinetic responses in organic molecular systems(有機分子系の動的応答を自在に操る"トランススケール結晶ダイナミクス")
著 者: Yuto Hino, Takumi Matsuo, Shotaro Hayashi
掲載誌: Nature Communications
掲載日: 2025年11月26日
D O I : https://doi.org/10.1038/s41467-025-66447-8

登壇者は、美しい自然を捉えることに主眼をおいた写真家です。
約40年にわたって自然をテーマに撮影する前田博史さんは、四国山地をはじめとした原生の奥山を愛し、地形・地質・植生への造詣の深さが感じられる作品を多数発表している"天然写真家"。今回は、香美市から徳島県那賀町にかけての稜線沿いにある美しい樹木やキノコの写真を紹介しながら、森林内での生命の循環や、自然光を活かす撮影方法などについてお話しいただきました。

また座長である高木教授も、天体写真家として登壇し、里山での暮らしと関わりが深い月をテーマにお話ししました。
それぞれの発表の内容や、座長による解説は、高木教授のホームページにまとめています。
詳しくは、そちらをご覧ください。

次回は、12月17日(水)17時から「生物季節の把握」をテーマに、村井 亮介特任研究員(高知大学)、谷岡 仁さん(野鳥研究家)、辻 雄介さん(昆虫研究家)が発表する予定です。
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椎葉さんが受賞したのは「Cascading Features of Convolutional Neural Network for Pneumoconiosis Detection」
(「じん肺」検出のための畳み込みニューラルネットワークの段階的な特徴)という論文です。
「じん肺」は、金属や石炭などの粉じんを長期間吸い込むことで肺が線維化する病気。診断は主に胸部X線画像によって行われますが、病変の特徴である「すりガラス状の陰影」は見極めが難しく、診断には高度な専門知識と経験が求められます。そのため医師への負担が大きく、診断結果にばらつきが生じることが課題となっています。
そこで近年、AI技術の一つである「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」を用いた画像診断支援システムの研究が活発化しています。CNNは、人間の神経回路を模した構造で、画像の中から病変などの特徴を自動で学習し、高い精度で検出できる技術です。
椎葉さんらは、高知大学 医学部の菅沼 成文教授らの協力を得て、CNNを用いた「じん肺」の診断精度を向上させるため、「AIの学習方法(最適化アルゴリズム)」と「画像加工手法」を比較検討しました。さらには、AIがX線画像のどの部分に注目し「じん肺」と診断したのか、AIの判断根拠を可視化することを試みました。

その結果、適切なAIの学習方法と画像処理を組み合わせることで、きわめて高精度にAIが「じん肺」を検出できることを実証。そしてAIの判断根拠を可視化するGrad-CAMを用いた分析では、AIは、多くの医師が「じん肺」診断で注目する「すりガラス状陰影」ではなく、肺の「境界部分」により強く注目しているという思いもよらぬ結果を明らかにしました。

(▲AIがX線画像のどこに注目し「じん肺」と推測したかを可視化)
今回の受賞を受けて椎葉さんは「まさか自分が選ばれるとは思っておらず、驚きました。AIの学習条件を細かく変えながら、どの部分が精度に影響するのかを地道に検証したことが評価されたのかもしれません」と喜びを語り、「今後は、なぜAIが肺の境界部分に注目するのか、そのメカニズムをさらに深く探求していきたい。この研究が、医師の負担軽減と、より正確な診断の一助となればうれしいです」と、さらなる研究への意欲を見せていました。
また本国際ワークショップでは、香川 和希さん(修士課程 情報学コース1年/指導教員:知能情報学研究室 吉田 真一教授)も、「Best Paper Award Finalist」として表彰されました。

表彰された論文は、「Fuzzy Clustering-Based Data Augmentation for Yuzu Fruit Detection」(ユズ果実検出におけるファジィクラスタリングを用いたデータ拡張法)です。
香川さんは、AIを農業などの分野へ導入する際の大きな課題であった「学習用データ」を収集する手間とコストを削減するため、ユズを対象に、少ない画像データから新しいデータを人工的に作り出す「データ拡張」に取り組みました。

(▲ファジィクラスタリングを用いて生成したユズの木の画像データ)
その結果、とくに学習用データが少ない状況では「ファジィクラスタリング」という輪郭の曖昧さを表現できる手法を用いると、より質の高い学習用データが生成可能で、AIの精度も向上することがわかりました。
香川さんは「研究を進めることで、自分の世界が広がっていく感覚があります。そして、自分の研究が将来、高知県の農業の発展に貢献できるかもしれないと思うと、大きなやりがいを感じます」と語りました。